\参加者の質問にお応えします!!Q&Aまとめ/

「病気になっても気づかない食の大切さ」 セミナー 2025年12月20日土曜日開催

立教セカンドステージ大学特命教員  松山伸一先生

当日皆さまからお寄せいただいたさまざまな質問に、松山先生が丁寧にお答えくださいました。ぜひ今後の健康で楽しい生活づくりのヒントにしていただければ幸いです。

Q1:魚に含まれる「栄養と加熱時間」の関係についてご教授頂ければ幸いです(素人の発想ですがお刺身が一番のような気がします)。

A:すべての食材において加熱によって失われやすい栄養素は、水溶性ビタミンである ビタミンB群(B1、B6など)、ビタミンC(魚には少量)です。 DHA・EPA(ω3脂肪酸)は高温・長時間調理で酸化が進みます。 ただし、加熱したものは食べても無駄というレベルで減少するわけではありません。

栄養素の損失をあまり気にせず、生魚と加熱魚をバランスよく食べましょう。

Q2:牛乳とヨーグルトについてですが、私は「低脂肪」と記載されているものはあえて避け、普通のものを選んでいます。健康面を考えると、やはり低脂肪のほうが良いのでしょうか。。

A:図44の「Healthy Agingによい食品と悪い食品」(Nature Medicine 31:1644-1652(2025))の結論を導いた研究はアメリカ人を対象とした研究です。その他、様々な研究で低脂肪乳製品の優位性が示されていますが、研究対象はすべて欧米人です。右図から、欧米人の牛乳消費量(乳製品を含む)がいかに多いかがわかると思います。大量の牛乳を飲んでいる人たちにとって、低脂肪かどうかは健康に関わる一大事だということを示しています。これに対して、日本人の牛乳摂取量は欧米人の1/4以下です。欧米人に比べて少量の牛乳しか飲まない日本人が、それを低脂肪牛乳に変えても健康への効果は限定的です。 ただし、牛乳や乳製品を毎日大量に摂っている日本人は、少し減らすことを考えてよいと思います。

Q3:貧血の治療は、鉄分だけではなく、他の栄養もバランスよく充足域に達していないといけないことが分かりました。 定期健康診断の血液検査の結果で、自分に足りない栄養は何かは、分かりますか? それとも、貧血治療目的の血液検査を受けるべきでしょうか?その時、普通の定期健康診断の項目の数値だけでなく、他にも検査を追加する必要はありますか?

A:この点に関しては、このセミナーの第3回「低栄養の予防と改善に向けて ~本当に体に必要な栄養とはなにか~」(2025年11月29日(土))で詳細にお話しました。ご参照ください。

QQ4:ピロリ菌は除菌したのですがいつも胃の検査をすると萎縮性胃炎と診断されます。 バランスの良い栄養を摂っても吸収が良くないとありましたが、栄養を摂る上で気をつける点はありますか?

A:胃酸の分泌低下で吸収が悪くなる栄養素は、タンパク質、ビタミンB12、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムです。タンパク質は、生より加熱調理(蒸す・煮る・柔らかく焼く)したものが消化吸収の効率が高いです。タンパク質食材の中では、白身魚・豆腐・卵 のほうが、赤身肉(牛豚肉)よりも消化吸収がよいと言われています。一度に大量に食べることはしないで、小分けにしましょう。鉄は動物由来のヘム鉄が吸収効率が高く、牛肉、マグロ・カツオ、レバーなどに豊富に含まれています。鉄はヘム鉄だけではなく、植物由来の非ヘム鉄も食べますので、ビタミンCを含む食材をいっしょに摂ると、亜鉛、カルシウム、マグネシウムとともに吸収効率が上がります。ビタミンB12は、魚介類(貝類、サバ、イワシ)、卵、レバーなどに多く含まれています。萎縮性胃炎の人は、血液検査でビタミンB12の充足/不足を確認しましょう。萎縮性胃炎でも、上記のような工夫をして、よく噛んで食べ、腹八分目にすれば栄養は吸収できますので、できるところから実行してください。

Q5:必ず栄養で摂取した方がよい不足栄養素と、亜鉛製剤のような摂取の仕方の違いを教えて欲しいです。

À:すべての栄養は食事から摂るのが大原則です。このセミナーの第1回「サプリメントの光と闇 ~なぜ、人はサプリメントに魅せられるのか~」(2025年10月25日(土))でお話したように、サプリメントが効果を発揮する場面は極めて限定的です(右表)。しかも効果を発揮する場面では医師の指導の下で治療として使うと心得てください。自分で好きなようの飲んでいては、体の中の栄養バランスが乱れ、過剰摂取につながります。体に必要な栄養素だから、摂れば摂るほど健康になるということはありません。

Q6:握力をつけるエクササイズはありますか?

A:握力は統計的に全身の筋力量を反映しやすい指標ですが、握力強化だけで全身の筋肉量が増えることはほぼありません。握力は握力として鍛えましょう。ただし、高齢者では握力トレーニングだけでも身体機能(上肢筋力の改善、日常生活動作の改善、歩行速度の改善など)が改善する報告があります。基本的には、『ハンドグリップ』(軽〜中強度)を使って、握る→ 2~5秒保持→ゆっくり戻すを10回1セットを1日2~3セットを痛みが出ない範囲で行う。『グーパー運動』(道具なし)は、手を強く「グー」→ 指を思い切り「パー」を10〜20回を1セットで1日2〜3セットの範囲で行なう。『タオル握り』は、タオルを丸めて強く握って5秒キープ→力を抜くを10回1セットを1日2~3セットを行う。『ゴムボール(ストレスボール)握り』は、ボールを全力の7〜8割で握る→3〜5秒キープ→ゆっくり戻すを15回1セットを1日2~3セットを行う。柔らかいボールから硬めのボールへ強度を上げていく。私は握力が38㎏のころに、ハンドグリップ(30㎏)で鍛えたら、2か月ほどで45㎏に達しました。

Q7:家族が果物を食べません。ジャムなら何とかヨーグルトにかけて食べられます。ジャムではダメですか?

A:果物には、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、食物繊維、ポリフェノール類などが含まれています。しかし、ジャムにはビタミンCはほとんど含まれていませんし、他の栄養素も加熱の影響で減っています。また、ジャムには砂糖が多く含まれており、血糖値が上がりやすいです。果物を全く食べないよりジャムを食べたほうがよいですが、ジャムを食べても果物を食べたことにはなりません。ドライフルーツもジャムと同様、果物の代替品としては不十分です。ご家族が果物を食べない原因に「花粉食物アレルギー」はありませんか? これは花粉症の人が果物や野菜を食べると、口や喉がかゆい、イガイガすることで発見されます。日本では1年中、スギ・ヒノキだけでなく、ハンノキ、シラカンバ、オオアワガエリ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉が飛んでいます。花粉症の人が原因花粉と交差反応(似たような構造をもつ別のタンパク質に反応してしまうこと)を持つ果物や野菜を食べた時に、口や喉がイガイガする、かゆい、腫れるなどしてアレルギーを起こすことを「花粉食物アレルギー」と呼びます。加熱調理されれば原因となるタンパク質が分解・変性されるため、生の果物で症状が出る人でもジャムやアップルパイであれば食べても症状は出ないことが多いです。ご家族は無意識に「花粉食物アレルギー」を回避しているために、生の果物を食べないのではないでしょうか。