\参加者の質問にお応えします!!Q&Aまとめ/
「低栄養の予防と改善に向けて」 セミナー 2025年11月29日土曜日開催
立教セカンドステージ大学特命教員 松山伸一先生
当日皆さまからお寄せいただいたさまざまな質問に、松山先生が丁寧にお答えくださいました。 ぜひ今後の健康で楽しい生活づくりのヒントにしていただければ幸いです。
A:食後に眠くなる主な原因は、血糖値の急上昇とその後の急降下(血糖値スパイク)にあります。炭水化物(特に白米、パン、菓子類など)を摂ると、血糖値が急激に上がり、インスリンが大量に分泌されて血糖を下げようとします。その結果、血糖値が急激に下がり、低血糖状態に近づくと、眠気やだるさ、集中力の低下が起こりやすくなります。また、食後は消化のために副交感神経が優位になり、リラックスモードになると、血流が消化器系に集中し、脳への血流が一時的に減ることで眠気を感じやすくなります。食後の眠気防止の対策として、①主食として血糖値の上がりにくい全粒穀物を摂る(あるいは主食の量を減らす)、②タンパク質や食物繊維の豊富な野菜、豆類などをいっしょに摂ることによって血糖値の急上昇を防ぐ、③腹八分目を意識する、④食後軽く歩くなど体を動かすことで血糖値の安定化を図るなどが考えられます。なお、食後に血糖値スパイクがあるかどうかは、血液検査の空腹時血糖やHbA1cではわかりません。
A:習慣的な飲酒で肝臓の負担が増すことによって、ビタミンB1・B6・葉酸などのビタミンB群の要求量が増える一方で、アルコールの影響で腸管からの吸収が低下します。特にビタミンB1の欠乏は、倦怠感やウェルニッケ脳症の原因となります。また、亜鉛はアルコール代謝で消耗するだけでなく、排泄も促進されます。同様にマグネシウムも尿中排泄量が増加します。飲酒習慣のある人が不足しやすい栄養素は、酒のつまみとしてだけではなく、日常的な食事として摂るのがポイントです。ビタミンB1(豚肉、玄米、枝豆、納豆)、ビタミンB6(バナナ、マグロ、鶏肉)、葉酸(ほうれん草、ブロッコリー、レバー)、亜鉛(牡蠣、牛赤身肉、卵、ナッツ)、マグネシウム(海藻、アーモンド、玄米、大豆製品)を意識して摂りましょう。また、肝臓の修復や代謝向上のために良質のタンパク質を日常的に摂取することも重要です。さらに、アルコール分解を助ける水や酸化ストレス軽減のためのビタミンC(果物、ブロッコリー、パプリカ)も忘れずに摂りましょう。最後に、飲酒量の目安(厚生労働省)は、男性:純アルコール20g/日以下(ビール500mL以下、日本酒・ワイン180mL以下)、女性:10g/日以下であることをお伝えしておきます。
A:糖尿病学会は糖尿病患者の果物摂取量を1日80kcal程度(みかん1個、りんご1/2個、キウイ1~1.5個程度)を基準量として推奨しています。血糖値が高めの方でも適量ならOKというのが一般的な考え方です。健常者の場合、厚生労働省は、果物を1日200g摂取することを推奨しています。食後に果物を食べると、すでに食物繊維・脂質・タンパク質などが胃腸にあり、糖の吸収速度が遅くなるため、血糖値の急上昇は抑えられます。肉・魚・卵などのタンパク質や野菜などのおかずを先に食べて主食や果物を最後に食べる「糖質ラスト」の順番が血糖値の上昇を抑えます。ビタミンCは三食すべてで摂ってほしいのですが、果物から摂るのは、脂肪蓄積の抑制の観点から朝食と昼食がおすすめです。夕食ではブロッコリー、ホウレン草、パプリカなどからビタミンCを摂りましょう。
A:ヘモグロビン(血色素)が12g/dL台の女性は多く、特に不定愁訴を感じていないようです。しかし、私の授業を受講して食事や生活習慣を整えているうちに、いつの間にか13g/dL台後半に改善されると、「最近、元気になりました」と本来の自分を取り戻したことを実感されます。ヘモグロビンが低値の人は、フェリチンの値から、低値の原因が鉄不足なのか(フェリチン低値)、鉄を利用できていないのか(フェリチン高値)がわかり、それに応じて対策も変わってきます。鉄が利用できていない場合は、鉄を摂るとかえって悪化するので、タンパク質やビタミンの不足がないか、感染症にかかっていないか、体に炎症が生じていないかなどに目を向けて対策を考えます。アルブミンは栄養状態を把握する最も重要な指標なので、1年に一度は知りたいところです。フェリチンやアルブミンを調べてくれる人間ドックを選んだり、かかりつけ医に申し出たりして、定期的にチェックすることをお勧めします。
A:10~16種類の雑穀をブレンドした様々な雑穀米が市販されています。白米一合に大さじ1~2杯の雑穀米をまぜて炊くだけなので便利です。もちろん、白米だけを食べるよりも、食物繊維、ビタミン・ミネラルなどが摂れます。良い悪いではなく、おいしいと感じるかどうかを基準に選択してください。私は、発芽玄米2合、もち麦1/4合、押し麦1/4合、白米1/2合、雑穀米大さじ3杯、小豆大さじ3杯を炊いたご飯を主食としています。玄米は硬くパサつきますが、発芽玄米は柔らかくモチモチとした食感でうま味もあります。ミルキークイーンのような低アミロース米の発芽玄米はモチモチ感を好む方に向いています。さらに、圧力鍋で炊くとおこわのような出来上がりになります。ただし、卵かけご飯には不向きです。
A:ビタミンCが欠乏している壊血病患者は、ビタミンC(アスコルビン酸)を摂取することによって治癒します。しかし、ビタミンCが充足している人がサプリメントなどを摂って結果的にビタミンC過剰になると、尿路結石や変形性膝関節症のリスクが上がり、持久力トレーニングの効果が阻害されることは『サプリメントの光と闇』でお話したとおりです。ビタミンCが豊富に含まれる柑橘類、キウイフルーツ、ブロッコリー、ホウレン草、パプリカなどを食べれば、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素も摂れます。しかし、サプリメントのビタミンCからはビタミンCしか摂れません。
A:小麦ふすまは、糖質(胚乳部分)が小麦粉の半分以下なので、小麦の全粒粉とは異なりますが、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富に含まれています。小麦ふすまは、パンやビスケットを作る際に少量を加えて使うのが一般的ですが、ヨーグルトなどに混ぜたり、ハンバーグやカレーの材料として使用したりすることもできます。ただし、小麦ふすまは大腸ポリープの成長を促したり(大きなポリープができやすくなる)、急性虫垂炎を引き起こしたりすることが報告されています。この研究は、小麦ふすまビスケット25g(小麦ふすまを7.5g含む)を毎日4年間食べ続けた結果を解析したものです。神経質になる必要はありませんが、健康によいからと大量に摂取するのは注意したほうがよいかもしれません。
A:足がつるのは筋肉に痙攣が起こっているからです(こむら返り)。考えられる原因の一つは、栄養・ミネラルの不足やアンバランスです。一番可能性が高いのはマグネシウム(ナッツ、大豆製品、海藻など)の不足です。マグネシウムのサプリメント(酸化マグネシウムではない)を飲む、エプソムソルトや塩化マグネシウムを湯船に入れて入浴する、足がつったらすぐにマグネシウムクリーム(マグバーム)を塗る、芍薬甘草湯(即効性の漢方薬:高血圧の人は医師に要相談)を飲むなどの対処法があります。その他、カリウム(生鮮食品)、カルシウム(乳製品、小魚)、ビタミンB群(豚肉、玄米、豆類)の不足やアンバランスでも起こります。夜間のトイレを気にして水分を控えている場合、就寝中の軽い脱水でも足がつります。運動のしすぎ、立ちっぱなし、冷え、加齢による筋肉量・柔軟性の低下もこむら返りの原因になります。利尿薬、降圧薬、コレステロール低下薬などの副作用で足がつることもあります。週に何度も起こる、痛みが長く強く続く、しびれ・脱力・歩きにくさを伴う、薬を飲み始めてから悪化したなどの場合は、整形外科や内科を受診してください。
A:MIND食で 「チーズは週1回以下」 とされている理由は、疫学的研究で「チーズをよく食べる人ほど認知症リスクが高かった」という関連が見られたからです。チーズは飽和脂肪酸が非常に多い食品で、飽和脂肪酸の過剰摂取は、LDLコレステロールの上昇、動脈硬化・脳血管障害のリスク上昇、インスリン抵抗性の増大、脳の炎症リスク上昇と関連づけられており、アルツハイマー病も脳血管性認知症も血管の質に影響されるため、リスク要因になると考えられています。また、多くのチーズは塩分が高く、高血圧→脳血管のダメージ→認知症リスクが懸念されています。ただし、MIND食を開発したMorris博士らは、チーズそのもののリスクよりも、チーズを多く食べる食生活パターンをより 問題視しています。チーズを多く食べる人は、バター、赤身肉・ 加工肉、ピザ、ファストフード、高脂肪乳製品なども多く摂りが ちで、これらが炎症、酸化ストレス、インスリン抵抗性、血管障 害を促進し、結果的に認知症リスクと相関すると考えられていま す。つまり、チーズ単独ではなく、チーズを含む食習慣全体のリ スクを示している可能性が高いのです。もう1点注意を要するの は、MIND食を提唱したのはアメリカの大学(Rush University) ということです。右の表は「世界のチーズ消費量」(2022年)で す。欧米諸国は日本の7~10倍のチーズを消費しています。つま り、欧米諸国がチーズの摂取を週1回以下に制限するということは、 日本並みの消費量に減らすということを意味しています。 したがって、平均的な日本人の場合、認知症予防のためにチーズを 控える必要はないと考えてよいと思います。
