「睡眠が変われば生活が変わる」セミナー Q&Aまとめ

\参加者の質問にお応えします!!Q&Aまとめ/

「睡眠が変われば生活が変わる」セミナー 2025年11月15日土曜日開催

看護士として都内有名大学病院勤務 井上福美講師

当日皆さまからお寄せいただいたさまざまな質問に、井上講師が丁寧にお答えくださいました。ぜひ今後の健康で楽しい生活づくりのヒントにしていただければ幸いです。

Q1:以前は午後10時から午前2時が睡眠のゴールデンタイムと言われていましたが、その説は過去のものになったのでしょうか?

A: ご質問ありがとうございます。

「22時から2時が睡眠のゴールデンタイム」という説は成長ホルモンが活発に分泌される時間帯という考えから来ています。成長ホルモンの分泌に注目した説です。
 セミナーで睡眠中各種ホルモンの分泌が活発に行われていることをお話ししました。成長ホルモンは、筋肉や骨の再生、新陳代謝の向上、紫外線ダメージからの回復、肌のバリア機能を保つなどアンチエイジングに重要な役割を果たしています。
 成長ホルモンの分泌は時間帯によるものではなく、深睡眠(ノンレム睡眠)中に多く分泌されることが様々な研究でわかってきていて、深睡眠(ノンレム睡眠)の中でもN3レベル(最も深い睡眠)で成長ホルモンが活発に分泌されることがわかってきています。つまり、寝る時間帯ではなく深睡眠(ノンレム睡眠)をいかにとれるかが重要ということです。
 したがって、「睡眠のゴールデンタイム」はないというのが最近の見解です。時刻よりもしっかり深睡眠(ノンレム睡眠)をとれるかが重要です。

Q2: 眠りやすい環境で光については、もう少し詳しくお願いします。

A: ご質問ありがとうございます。

セミナーで光の刺激が目から入り脳の神経細胞に伝達され体内時計がリセットされること、そして、入眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌量が増加するとお話ししました。身体は、朝起きると同時に夜眠るための準備を始めているということです。
 ご質問の、眠りやすい光環境について補足させていただきます。入眠を促すホルモンであるメラトニンは夜の明るい環境では分泌が抑制されるため、身体が入眠モードに入っていけません。寝室だけではなくリビングなども夜の間は少し暗いと感じるくらいの明るさにしましょう。暖色系の明かりで100ルクス以下が良いとされています。雰囲気の良いレストランやホテルのラウンジのイメージです。キッチンなどで作業するときは必要な部分だけ明るくする、読書をする際には手元を照らすなどの工夫が出来そうです。寝室はできるだけ暗くし、トイレに起きた際には間接照明や足元ライトを照らすなどし、光が直接目に入らないようにしましょう。

Q3: 年齢とともに睡眠の質が悪くなっているように感じます。薬に頼る事なく眠れるようにするためにおすすめの音楽や香り・運動などあったら教えて下さい。

A: ご質問ありがとうございます。

「寝ようと思ってもなかなか寝付けない」「夜中に何度か目が覚める」「若いころはよく眠れたのに」などお悩みの声を多く聞きます。これらの変化は、健常な加齢の過程で、過剰に気にしてしまうと睡眠への不安となり、不眠の原因につながります。年齢を重ねるにつれてこれらの変化は自然なことと受け入れることが大切です。
 しかし、自然なこととは言え、睡眠の質が悪くなっていると感じる日々はつらいものです。ご質問にあるように、セミナーでは十分にお話しできなかった点を補足させていただきます。

音楽:
 1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)が含まれる音楽や音は、心を落ち着かせリラックス効果があるとされています。例えば、波の音、川のせせらぎ、鳥のさえずり、雨音、アコースティックギター、クラシック音楽などです。リラックスし脳の興奮を抑えることで自然な眠りを促すことが期待できます。

香り:
 ラベンダーやベルガモットの香りがリラックス効果をもたらすという研究が多くみられます。注意すべきは、すべての人に効果が保証されたリラクゼーション法ではないことです。一人ひとり香りの好みは違うため自身の好みの香りを見つけることが大切です。

運動:
 中強度以上の有酸素運動(早めに歩く、水中歩行、パワーヨガなど)、筋力トレーニング、ランニング、登山などが睡眠改善につながるという報告があります。1日60分未満でも日中、週に複数回の運動習慣をつけていくことが大切です。夕方の運動は身体の興奮状態を避けるため就寝の2~4時間前までにしましょう。

Q4: 睡眠が長すぎても健康に良くないと聞いたことがあるのですが、シニアが床上時間ではなく、睡眠として8時間以上眠るのは避けるべきですか?

A: ご質問ありがとうございます。

2016年に発表された海外の研究では、7時間未満の睡眠による将来の死亡リスクは1.07倍であるのに対し、8時間以上の睡眠による将来の死亡リスクは1.33倍に増加することが報告されています。2020年日本の研究機関でも、長時間睡眠で死亡リスクが増加すると報告されています。何らかの病気によって健康状態が良くないことで長時間睡眠になりやすい傾向にあったり、身体活動も低下し糖尿病や肥満、心筋梗塞や脳卒中などの病気が発症することで死亡リスクの上昇に結び付きやすいと考えられています。
 セミナーで睡眠時間には少なからず個人差があり、持病等によっても睡眠の状態が変化する可能性があるとお話ししました。多様化する生活環境が個人の睡眠に与える影響も多様です。シニア世代でも日中に忙しく過ごしておられる方においては、8時間以上の睡眠時間が必要な場合もあります。時間に縛られず、日中の活動と昼夜のメリハリをつけて、寝覚めがすっきりしているのであればそれがご自身にあった睡眠時間であるととらえてよいと思います。

Q5: 睡眠薬の功罪について。

A: ご質問ありがとうございます。

2009年の厚生労働省研究班の調査によると、日本人成人の20人に1人が睡眠薬を服用しているという結果が出ています。さらに中高年層では、うつ病や生活習慣病などが増加するため不眠も高頻度にみられます。不眠症は身近な睡眠障害です。
 不眠症の治療には薬物療法がおこなわれる場合が多く、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が中心に行われてきました。一般の内科でも処方が可能なので処方頻度が高くなります。しかし、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は筋弛緩作用や依存性があります。ふらついたり転倒しやすかったり、薬がないと眠れない、薬が手放せないという状態になります。結果、一部の利用者は多剤併用や漫然長期処方に頼ってしまいます。
 このような背景から、2014年厚生労働科学研究班と日本睡眠学会が合同で「睡眠薬の適正な使用と休薬のためのガイドライン」を出しています。「出口を見据えた不眠治療」に焦点が当てられています。最近は新たな作用機序を持つ睡眠薬が出てきていて、その有用性や安全性が議論されています。「薬物に頼らない不眠治療」も提案されています。認知行動療法や、睡眠衛生指導、睡眠教育がそれに該当します。
 睡眠衛生指導や睡眠教育が不眠症治療のファーストステップとして注目される日が来ることを期待しています。

Q6: 高齢者は床上時間8時間以内を目安ということですが、寝過ぎは認知症の発症リスクを高めると聞いたことがあります。そういうデータがあるのでしょうか?

A: ご質問ありがとうございます。

2022年に発表された海外の研究では、9時間以上の睡眠がアルツハイマー病の発症リスクを増加させることが報告されています。
 何らかの病気によって健康状態が良くないことで長時間睡眠になりやすい傾向にあったり、身体活動の低下、日中のメリハリの低下などからうつ病などの発症で認知症リスクの増加につながっていると考えられています。